親から実家を相続したものの、兄弟姉妹との共有名義になっている。自分は売却したいけれど、ほかの相続人は残したいと考えている。売る場合の代金や税金を、どのように分ければよいのか分からない。このようなお悩みは、相続不動産のご相談で少なくありません。
共有名義の相続不動産を一つの物件として売却するには、原則として共有者全員の合意が必要です。そのため、価格査定を受けるだけでなく、相続登記、持分割合、売却条件、代金の分配、税務までを早い段階で整理することが重要です。
共有不動産の判断が難しいのは、不動産の価格だけではなく、相続人それぞれの生活状況や感情、税負担、今後の管理責任が関係するためです。当社は杉並区・高円寺を拠点に、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の相続不動産や権利関係が複雑な物件に対応しています。本記事では、当社の実務経験と専門家との連携を踏まえ、共有名義の相続不動産を売却する際の考え方を解説します。
共有名義の相続不動産は売却できるのか
結論からお伝えすると、共有名義の相続不動産も売却できます。ただし、不動産全体を売る場合と、自分の共有持分だけを売る場合では、必要な手続きや売却条件が大きく異なります。
不動産全体を売るには共有者全員の合意が必要
土地や建物全体の売却は、共有者全員の権利を買主へ移す行為です。そのため、持分の過半数だけで決めることはできず、原則として共有者全員の合意が必要です。売買契約や決済では、共有者全員が本人確認や意思確認を受け、必要書類へ署名・押印するのが基本です。
例えば、兄が2分の1、弟と妹がそれぞれ4分の1を相続している場合、兄の持分が最も大きくても、兄だけの判断で不動産全体を売ることはできません。弟または妹のどちらかが反対していれば、そのままでは通常の売却を進められません。
共有者が遠方に住んでいる場合は、委任状などを用いて手続きを進められることもあります。ただし、認められる方法や必要書類は取引内容によって異なるため、事前に司法書士や不動産会社へ確認する必要があります。
自分の共有持分だけを売ることはできる
各共有者は、原則として自分の持分だけを処分できます。ほかの共有者の同意がないからといって、自分の持分まで絶対に売れないわけではありません。
ただし、共有持分だけを購入しても、買主は不動産全体を自由に使えるわけではありません。一般の買主にとって利用しにくく、融資も受けにくいため、買い手は共有持分を扱う専門業者などに限られやすくなります。その結果、物件全体を売却して持分に応じて代金を分ける場合より、持分単独の価格が低くなることがあります。
また、第三者が新たな共有者になると、残った親族と利用方法や管理費の負担を巡って問題が生じる可能性もあります。共有持分だけの売却は一つの選択肢ですが、価格だけで決めず、売却後の関係まで考えて判断することが大切です。
売却前に相続登記と持分割合を確認する
共有名義の相続不動産を売却する前に、誰がどれだけの持分を所有しているのかを登記で明確にします。遺産分割協議がまとまっていても、亡くなった方の名義のままでは、通常は買主へ所有権を移転できません。
相続登記を済ませなければ売却できない
相続登記は2024年4月1日から義務化されています。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請することが基本で、正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象となる可能性があります。義務化前に発生した相続で登記が未了の場合にも期限が設けられているため、古い相続だから対応しなくてよいわけではありません。
法務局へ相続人申告登記を申し出ることで、一定の場合に基本的な申請義務を履行できる制度もあります。しかし、相続人申告登記だけでは、売却に必要な権利関係が完成するわけではありません。不動産を売却するには、遺産分割の内容などに基づく相続登記が必要です。
当社の実務でも、売却相談を受けた後に、登記名義が祖父母やさらに前の世代のままだと分かることがあります。時間が経つほど相続人が増え、戸籍の収集や意思確認に時間を要するため、売却するか決めていない段階でも登記状況は早めに確認することをおすすめします。
遺産分割協議書と登記事項証明書を照合する
共有名義になる場合は、遺産分割協議書に記載された取得者と持分が、登記へ正確に反映されているかを確認します。遺産分割協議には原則として相続人全員の合意が必要であり、協議書がすでに作られている場合も、売却時には各相続人の意思確認を丁寧に行います。
確認したい主な資料は次のとおりです。
- 登記事項証明書
- 遺言書または遺産分割協議書
- 戸籍・除籍謄本など相続関係を示す資料
- 固定資産税納税通知書や評価証明書
- 購入時の売買契約書、領収書、建築関係書類
- 住宅ローンや抵当権がある場合の残債資料
書類が見つからなくても、すぐに売却を諦める必要はありません。何が不足しているかを整理し、司法書士や税理士と確認しながら補える資料を探していきます。
共有者全員の合意をまとめるために決めること
共有者の意見が一致しない原因は、単純な賛成・反対だけではありません。「価格が安い」「思い出のある実家を残したい」「荷物を整理できない」「売却後の税金が不安」など、それぞれが異なる問題を抱えていることがあります。まず論点を分けて話し合うことが重要です。
売却価格と最低条件
最初に、現在の市場で見込める価格を把握します。相続税評価額や固定資産税評価額は税務上の基準であり、実際の売却価格と一致するとは限りません。立地、接道、建物の状態、再建築の可否、境界、越境、賃貸中かどうかなどを確認したうえで査定します。
共有者間では、希望価格だけでなく、次の条件も決めておくと交渉が進みやすくなります。
- いくら以上なら売却に合意するか
- 仲介で時間をかけるか、買取で早く現金化するか
- 値下げの判断を誰がどのように行うか
- 残置物の処分費、測量費、修繕費などをどう負担するか
- 売買契約と決済に誰が出席するか
当社では、査定額だけを示すのではなく、想定される費用を差し引いた手残りや販売期間も含めて複数の売却方法を比較します。
売却代金と費用の分け方
売却代金は、基本的に登記上の持分割合に応じて各共有者へ帰属します。仲介手数料、測量費、解体費、登記費用などの負担も、持分割合を基準にする方法が分かりやすいでしょう。
一方で、一人の共有者だけが固定資産税や修繕費を長年負担してきた、残置物の処分を担当した、ほかの相続人へ代償金を支払ったといった事情があると、単純な持分割合だけでは納得できない場合があります。そのときは、過去の支払い記録を確認し、売却代金から精算するのか、相続人間で別途調整するのかを決めます。
金額の合意は口頭だけで済ませず、誰が何を負担し、売却後にいくら受け取るのかを書面に残しておくことがトラブル防止につながります。
空き家の管理と売却までの役割
売却が決まるまでにも、固定資産税、火災保険、庭木の手入れ、換気、郵便物、雨漏りや設備故障への対応が必要です。管理を一人へ任せきりにすると、不公平感が生まれやすくなります。
実際のご相談では、相続した実家に住む予定がなく、空き家の維持費や防犯、建物の劣化を心配して売却を選ばれた方がいらっしゃいました。名義や過去の経緯を調べるだけでも時間がかかり、家の中の荷物整理には気持ちの負担も伴います。共有者同士で「誰が、いつまでに、何をするか」を決め、必要なら片付けや管理を外部へ依頼することも検討しましょう。
共有名義の相続不動産を売却する流れ
売却を円滑に進めるには、先に販売を始めるのではなく、権利・意思・税金の順に整理します。
1.相続人と登記名義を確認する
戸籍、遺言書、遺産分割協議書、登記事項証明書を確認し、相続人と現在の所有者を特定します。高齢の相続人の意思能力に不安がある場合は、成年後見制度の検討が必要になることもあるため、早めに司法書士や弁護士へ相談します。
2.相続登記を行う
遺産分割の内容に基づいて名義と持分を登記します。戸籍収集から登記申請まで司法書士へ依頼すると、書類不足や登記漏れを防ぎやすくなります。
3.不動産を調査して査定を受ける
建物や土地の状態、境界、法令上の制限、ローン残債、占有状況などを調査します。東京都内の古い住宅地では、接道、再建築の可否、越境、私道持分などが価格や売却方法に影響するケースがあります。神奈川県・埼玉県・千葉県でも、郊外の空き家や広い土地では測量、造成、解体の要否が重要です。
4.共有者全員で売却条件を決める
査定結果を基に、価格、販売方法、費用負担、代金分配、引渡し時期を合意します。共有者のうち一人を連絡窓口にすると手続きは進めやすくなりますが、重要な判断は全員に共有し、書面やメールで記録を残します。
5.媒介契約を結び販売活動を行う
共有者全員が売主として媒介契約を結びます。遠方在住や入院などで手続きが難しい共有者がいる場合は、委任の方法を事前に確認します。買主へは、物件の状態や権利関係について必要な説明を行います。
6.売買契約・決済・代金分配を行う
売買契約を締結し、決済日に所有権移転登記、抵当権抹消、代金の受領、鍵の引渡しなどを行います。売却代金を代表者が一度受け取り、後から独自の割合で分けると贈与の問題が生じる可能性があるため、入金方法も税理士と確認しておくと安心です。
共有者が売却に反対している場合の選択肢
共有者の一人でも反対している場合、不動産全体の通常売却を強引に進めることはできません。反対の理由を確認したうえで、次の選択肢を比較します。
ほかの共有者が持分を買い取る
実家を残したい共有者がいるなら、その人が売却希望者の持分を買い取る方法があります。ただし、親族間だからと価格を曖昧にすると、ほかの相続人との不公平感や税務上の問題につながります。第三者の査定を基に価格を決め、支払い方法や登記を正式な契約書へ残すことが大切です。
当社が対応した親族間売買でも、関係が良好だからこそ金額や修繕負担を直接話しにくいというご相談がありました。当社が間に入り、過去の事例を説明しながら条件を書面で整理したことで、双方が納得できる取引につながりました。
自分の持分だけを売却する
全体売却の合意が得られない場合に、持分のみを売る方法です。ただし、価格が低くなりやすく、第三者が共有関係へ入る影響もあります。専門業者から提示された金額だけで即決せず、親族による買取や全体売却との手残りを比較してください。
共有物分割を検討する
話し合いで解決できない場合は、共有物分割請求を検討することがあります。土地を分筆する現物分割、一人が取得してほかの共有者へ代償金を支払う方法、売却して代金を分ける方法などがあります。協議がまとまらなければ裁判所の手続きとなる可能性があるため、弁護士への相談が必要です。
裁判は時間と費用がかかり、親族関係への影響も小さくありません。まずは査定と選択肢を共有し、第三者を交えて合意できる余地がないかを検討することが現実的です。
売却時の税金は共有者ごとに計算する
共有名義の不動産を売却した場合、譲渡所得は原則として各共有者が自分の持分に応じて計算し、必要に応じてそれぞれ確定申告を行います。売却価格だけでなく、取得費、譲渡費用、利用できる特例が税額へ影響します。
取得費と譲渡費用を確認する
譲渡所得は、おおむね「売却収入-取得費-譲渡費用」で計算します。相続不動産では、亡くなった方が取得したときの購入代金や購入手数料などを引き継ぐのが基本です。しかし、何十年も前の契約書や領収書が残っていないことは珍しくありません。
当社では相続を専門とする税理士事務所と連携し、不動産の販売戦略と税引き後の手残りを一緒に検討しています。単に高く売るだけでなく、資料の有無や特例の期限を確認したうえで、手元に残る金額を比較することが重要です。
特例は共有者ごとに適用を判断する
相続財産を一定期間内に売却した場合、納付した相続税の一部を取得費へ加算できる特例があります。また、共有のマイホームを売った場合の3,000万円特別控除も、要件を満たすかどうかを共有者ごとに判断します。
誰が住んでいたか、相続税を納めたか、いつ売却するか、建物と土地を誰が所有しているかによって結論は変わります。特例同士を併用できない場合もあるため、売買契約を結ぶ前に税理士へ確認しましょう。
なお、売却代金を持分と異なる割合で分ける場合や、一人がほかの共有者の費用を負担する場合には、贈与税など別の論点が生じる可能性があります。相続人間で納得しているだけでは税務上も問題がないとは限りません。
共有名義の相続不動産で失敗しないためのポイント
共有不動産の売却では、販売開始前の整理が結果を左右します。特に次の点を意識してください。
- 登記事項証明書で名義人と持分を確認する
- 遺産分割協議書と登記内容の不一致がないか確認する
- 共有者全員の売却条件を早めに書面化する
- 査定価格だけでなく、費用・税金を差し引いた手残りを比べる
- 共有持分だけを売る前に、全体売却や親族間買取も比較する
- 相続登記は司法書士、税務は税理士、紛争の可能性があれば弁護士へ相談する
共有者間の話し合いを不動産会社だけで完結させようとすると、法務や税務の見落としが起こり得ます。当社が重視しているのは、必要な専門家と早い段階から情報を共有し、売却後に問題を残さないことです。
まとめ
共有名義の相続不動産を一つの物件として売却するには、原則として共有者全員の合意が必要です。売却前には、相続人、登記名義、持分割合、抵当権、費用負担、代金分配、税金を順に確認します。
合意が得られない場合も、ほかの共有者による持分買取、自分の持分の売却、共有物分割などの選択肢があります。ただし、価格、親族関係、税務、売却後のリスクが異なるため、目先の現金化だけで判断しないことが重要です。
相続不動産では、登記と売却と税務を別々に考えるのではなく、最終的な手残りと将来のトラブル防止まで含めて計画しましょう。
共有名義の相続不動産でお悩みの方はアクティブホームへご相談ください
共有名義の相続不動産は、通常の不動産売却以上に、相続登記、全員の意思確認、持分評価、税金などの専門知識が必要です。アクティブホームでは、相続物件、共有名義、再建築不可、借地権・底地、空き家、任意売却など、専門性が求められる不動産売却に対応しています。
杉並区・高円寺を拠点に、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県の1都3県でご相談を承っています。司法書士、税理士、弁護士などと連携し、ご事情に合わせて売却、保有、親族間売買、買取などの選択肢を丁寧にご案内します。
査定だけのご相談や、まだ売却すると決めていない段階でのご相談も可能です。無理に売却を勧めたり、しつこい営業を行ったりすることはありません。共有者との話し合いを始める前でも構いませんので、何から整理すべきか分からない方は、無料相談・無料査定をご利用ください。
※お電話の際は、「ホームページを見た」とお伝えください。